CEVライダー 石塚健のレースレポート「海外で戦うことの大変さを思い知らされた開幕戦」

MotoGPライダーを目指してCEVレプソルインターナショナル選手権に参戦するレーシングライダー石塚健選手のレースレポートがスタートします!第1回目は、ポルトガルにあるエストリルサーキットでおこなわれた開幕戦について。海外でレースをするのは、想像以上に大変なようです。

次々の起こるアクシデントに悩まされた開幕戦

 皆さんこんにちは! この度、バイクのニュースでレースレポートを連載させていただくことになりました、レーシングライダーの石塚健(いしづか たけし)です!

 2021年も昨シーズンに引き続き、目標である世界最高峰ロードレース MotoGPへの参戦を目指し、FIM CEV REPSOL Moto2 ヨーロピアンチャンピオンシップに参戦することになりました。

昨シーズンに引き続き、FIM CEV REPSOL Moto2 ヨーロピアンチャンピオンシップに参戦するレーシングライダーの石塚健(いしづか たけし)選手

 CEV REPSOL Moto2 ヨーロピアンチャンピオンシップは、いったいどんなレースなのかを簡単に説明すると、MotoGPと同じドルナスポーツが運営するロードレースのヨーロッパ選手権で、スペインやポルトガルを中心に、年間7開催11レースで争われるチャンピオンシップです。
 
 現在MotoGPで活躍中のマルク・マルケス選手なども参戦していた、若く才能のあるライダーがひしめく、いわば世界選手権への登竜門的存在の選手権。
 
 そんなCEVでは、Moto2、Moto3、ETC(ヨーロピアンタレントカップ)の3クラスがおこなわれているのですが、僕が参戦するのは中量級のMoto2クラス。エンジンはホンダ CBR600RR、タイヤはダンロップのワンメイクに、オリジナルシャーシを組み合わせたレーシングマシンで争うカテゴリです。
 
 僕は、このCEVのMoto2クラスに自らスポンサーを集め、スペインのマドリードを拠点とする「easyRaceTEAM」というチームから、自己資金を持ち込んで参戦しています。
 
 2019年、2020年と、なんとかフル参戦を果たし、3年目のシーズンをスタートさせました。

最初の難関はコロナ禍に伴う入出国

 そんな今季ですが、まず大変だったのが新型コロナウイルス感染拡大による、出入国の為の準備です。

昨シーズンに引き続き、FIM CEV REPSOL Moto2 ヨーロピアンチャンピオンシップに参戦するレーシングライダーの石塚健(いしづか たけし)選手。コロナ禍に伴い、入出国に苦労したといいます

 現在の日本人は、原則ヨーロッパへの渡航は認められていません。その為、渡航に必要な書類の手配やPCR検査、そしてそれらの手続きや、渡航条件が刻一刻と変わるので、日々状況を確認しながらの準備となるため、出発直前まで情報が2転3転し、バタバタでした。
 
 そんなこんなで、なんとか無事に開幕戦の舞台、ポルトガルはエストリルサーキットに到着し、まずは2日間の事前テストに参加。約5か月振りに乗るMoto2マシンの感覚を取り戻すところからスタートとなります。

 その後、順調にテスト項目を消化し、マシンとのフィーリングもまずまず。やはり、久しぶりに乗るMoto2マシンは、かなりパワフルに感じられました。

いよいよレースウィークに突入

 そして翌週、ついに迎えた2021年シーズンのCEV開幕戦。レースウィーク初日はドライコンディション、2日目はフルウエットと、天候もコロコロと変わる状況です。

FIM CEV REPSOL Moto2 ヨーロピアンチャンピオンシップに参戦するレーシングライダーの石塚健(いしづか たけし)選手と「easyRaceTEAM」チームクルー

 そんな中、僕のマシンは2016年式で、僕自身は2019年から使用しているのですが、数々の転倒や走行距離数などのいろいろな要因により、いたるところが傷んでいるため、機能が低下しているとのチーム判断で、別の車体へエンジンなどを載せ替える変更がおこなわれました。
 
 レースWEEKの練習走行では、その影響もあってか走行中に電気系のトラブルが多発してしまい、事前テストでのペースを取り戻すことが、なかなかできません。
 
 そして、悪い流れに追い打ちをかけるかのように、今度はメーカーから直接チームに送ってもらったヘルメットが、今シーズンから変更となったヘルメットのレギュレーションに適合しておらず、公式予選と決勝レースで使用できないという事態まで起きてしまいます。
 
 現地で用意できる唯一のヘルメットが、MTヘルメットというスペイン製のヨーロッパ人向けに作られているヘルメットだけだったので、仕方なくパドックで購入し、使用したのですが、やはりいつも通りとはいかず、フィット感が薄いだけでなく、視界がとても悪いなど、普通に走れる状況ではありませんでした。
 
 シールドの内側に貼る曇り止めシートの取り付け位置を示すラインのような段差が丁度、走行中の僕の視界に入ってしまい、先が見えないだけでなく、ライディングに集中すること自体がとても難しい状態だったのです。
 
 しかし、結果を残さなければ、無理をしてポルトガルまで来た意味がありません。内装のサイズを調整してもらったり、ヘルメットの被り方を工夫したりなど、さまざまな試行錯誤をすることで、最低限使用できるレベルには持っていきましたが、やはり被り慣れていないヘルメットで走行するのは、とても難しかったです。
 
 さらにレース1は、電気系のトラブルを抱えながらのレースとなり、自分自身のミスもあって、結果は15位。

FIM CEV REPSOL Moto2 ヨーロピアンチャンピオンシップに参戦するレーシングライダーの石塚健(いしづか たけし)選手。レース2では不運にも1周目に右足のバンクセンサーが取れ、飛んでいってしまうというアクシデントが

 レース2は電気系のトラブルは解消し、スタートも上手く決まったのですが、不運にも1周目に右足のバンクセンサーが取れ、飛んでいってしまうというアクシデントが発生してしまいます。
 
 ロードコースでバイクを速く走らせるには、バンク中の膝擦りは必須なのですが、バンクセンサーが付いていない状態で膝をすれば、路面との摩擦により体ごと持っていかれ、転倒リスクが増大することは明確です。
 
 それでもレースを諦めきれなかった僕は、何度も転倒をしかけながら、極力膝をつかないように足に力を入れ、なんとかチェッカーを受けましたが、本当にフィジカル的にもメンタル的にも厳しいレースとなりました。
 
 レース後に、バンクセンサー無しで走った後の右膝を見ると、その部分がボロボロに削れてしまっている状態。今度は、次戦までに革ツナギを修理する方法を探さなければなりません。
 
 そんなこんなで、今回は次々に起こるアクシデントに悩まされ、納得の行くレース結果を残すことができませんでした。
 
 次戦は5月9日決勝レースがおこなわれる第2戦バレンシアラウンド! 次こそは、しっかりと準備を整え、良い結果に繋げたいと思います。皆さん、応援よろしくお願いします!

【了】

【画像】FIM CEV REPSOL Moto2 ヨーロピアンチャンピオンシップに参戦する石塚 健選手(11枚)

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Writer: 石塚健

(レーシングライダー)埼玉県出身の28歳。3歳からポケットバイクに乗り始め、ロードレースというオートバイ競技に参戦。現在は世界各国で活躍できるライダーを目指して日々、活動中。
2019年から、ヨーロッパでおこなわれる「FIM CEV REPSOL Moto2ヨーロピアンチャンピオンシップ」への挑戦を開始。2024年は「FIM 世界耐久選手権」のトップカテゴリーとなるEWCクラスに、スロバキアのMaco Racing Teamより参戦します。スポンサー募集中!応援よろしくお願いします。

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